英国ISAから見たNISAについて
今回は、口座開設数1000万口座を突破しており今後も増加していくと予想されているNISA(一般・つみたて)について解説していきます。
ただ単にNISAについて解説していくのでは、他の方の記事と同様な内容の記事になってしまうため、NISAのモデルとなった英国ISAと比較しながら、現在や今後のNISAについて解説していきましょう。
それでは本題へ。
NISAとは?
NISA(Nippon Individual Saving Account)とは、少額投資非課税制度のことで家計金融資産の過半が預貯金であり、アメリカやヨーロッパと比べると金融資産にけるリスク資産の割合が低かった日本において安定的な資産形成を支援するために、2014年1月から導入されました。
投資で得られた利益は雑所得に分類され、利益に対して20%課税となります。
しかし、NISA口座における利益は非課税でそのまま利益として受け取れることができます。
ここが非常に魅力的なところです。
このNISAについてですが、実は英国ISAをモデルに創設されたのです。
英国ISAは1999年に開始されたのですが、その当時の英国は貯蓄率が低くこれを改善するために、株式の非課税制度であるPEPと非課税預金等のTESSAを整理・統合され創設されました。
最初は一般NISAのみだったのですが、現在ではジュニアNISAやつみたてNISAとタテ(対象年齢)にもヨコ(非課税期間)にも制度拡充が図られています。
平成30年12月時点では、一般・つみたてNISAの口座開設数は1253万口座となっています。(一般:1150万口座、つみたて:103万口座)
買い付け額は、15兆7000億円となっています。(一般:15兆6000億円、つみたて:1000億円)
英国ISAとNISAの違い
対象商品の違い
まずは対象商品の違いについて解説していきましょう。
英国ISAは、株式型ISAと預金型ISAの2種類があり、18歳以上の英国居住者は誰でも、1口座あるいは両方の2口座を持つことができます。
日本NISAでは、一般NISAかつみたてNISAのどちらかの口座を持つことができます。
非課税期間の違い
英国ISAは、「最低10年の予定で開始し、導入後7年経過した時点で制度の効果検証をし必要な措置をとる」としてISA制度が開始されました。
この公約通り英国財務省は2006年に効果検証し、低所得者層や若年層の利用が拡大していることを評価し、英国ISA制度は恒久化となりました。
NISAは、一般NISAが最大5年、つみたてNISAが最大20年の非課税期間となっています。
つみたてNISAでは、限度額・非課税期間ともに最大限活かしたとしても800万円までしか拠出することができません。
英国ISAで年間40万円(つみたてNISAと同じ設定)で、20歳〜80歳まで拠出したとすると、2400万円まで非課税で資産運用することができます。
※ 英国ISAの年間限度額は約296万円
また、2015年から英国ISAでは配偶者のみにISA口座の非課税での相続が認められました。
つまり、夫に先立たれてしまっても妻が夫のISA口座を非課税で引き継ぐことができるため、残された妻の経済的な支えとなるのです。
※ 子や孫へは適用されない
NISAと比較すると、英国ISAではタテ(対象年齢)にも、ヨコ(非課税期間)圧倒的な制度拡充が図られています。
投資限度額の考え方の違い
先ほども言ったように、英国ISAは年間限度額は約296万円、一般NISAは120万円、つみたてNISAは年間限度額40万円です。
拠出限度額に違いがあることは明らかです。
しかし、この拠出限度額に対する考え方にも違いがあります。
英国ISAでは、限度額は株式型ISA口座あるいは預金型ISA口座への「拠出額」で管理するため、購入していた商品を売却した場合、その売却代金は口座内で他の商品の購入代金に充てることができます。
つまり、ISA口座では運用商品の売買を繰り返しても、限度額にカウントされません。
NISAの場合、NISA口座で購入した商品を売却すると、その売却代金はNISA口座外に払い出されます。そのため、その売却代金をNISA口座で他の商品の購入代金に充てようとすると限度額にカウントされてしまいます。
つまり、NISA口座で売買を繰り返すと限度額にカウントされてしまうため、すぐに年間120万円の限度額に達してしまいます。
また、株式や投資信託の分配金についても限度額に対する考え方は同じです。
ここが英国ISAとNISAにおける、限度額に対する考え方の違いです。
普及状況の違い
英国ISAとNISAの普及状況の違いを見てみましょう。
NISAの口座開設は年々増加していますが、世帯数に対する割合から見るとまだまだ普及拡大を目指していかないといけないですね。
英国ISAの制度恒久化や限度額・限度額に対する考え方、口座の相続などを参考にして、NISAの制度拡充を図ってもらいたいですね。
金融庁では、現在NISAの恒久化に向けて取り組んでいるそうです。
英国ISAから考える、今後のNISAについて
今後のNISAについて、老後に備える自助努力の重要性を広く啓発していく必要があります。
その意味では、金融庁報告書の「老後2000万円不足」は老後資産形成の自助努力を促したと言えます。
じゃあどうやって資産形成していけばいいのか?
日本人の金融資産はほとんどが預貯金・保険等が占めている状況です。
つまり、日本人のマインドを貯金思考から投資思考へと変えていかなければなりません。
そのためには、報告書にも書かれていた長期・分散投資の重要性、非課税メリットを国民に周知してもらうよう国も努力する必要があります。
また、それらと同時並行でNISA制度の恒久化、売買自由化、非課税での相続などの利便性の向上も進めていくべきでしょう。
おわり
いかがだったでしょうか?
NISAの概要、モデルとなった英国ISAとNISAとを比較して違いや今後のNISAについて解説していきました。
今回の内容をまとめてみました。
皆さんも是非NISAに関心を持っていただき、老後の資産形成・運用に役立てていただければと思います。
ここまで見ていただきありがとうございました。
投資はあくまで自己責任。