20代リハビリ職のまじめな資産運用

20代リハビリ職で働く投資家です。 積立NISAでeMAXIS Slim 先進国株を積立中。企業型DCでも、先進国株に積立しています。

金融庁報告書騒動から見える日本で投資が広がらない理由

金融庁報告書騒動盛り上がっていますね。
担当大臣が報告書の受け取りを拒否したり、自民党が撤回要求したりと。

 

職場でも「将来2000万円不足するらしいで」という会話が聞こえてきました。
また、患者さんにも「老後2000万円足りんくなるらしいな」と心配されました。

 

身近な会話からも分かるように注目されているのは「老後に2000万円不足」です。しかし、金融庁が目的としていたことは、ただ単に国民の不安感情を煽りたかったわけではないでしょう。

 

その先にある、積立NISAや確定拠出年金などを普及拡大させ、
国民の投資に対する意識を変えたかったのではないでしょうか?

 

さあ、この報告書騒動について書いていきましょう。

 

 

 

「老後2000万円不足」だけが注目される

今回の報告書騒動で目に耳にするのは「老後2000万円不足」ばかり。
たしかに老後に2000万円不足することは衝撃的なのかもしれません。

 

この報告書では、夫は40年間会社で働いて、妻は専業主婦の夫婦が、高齢夫婦無職世帯になった場合で計算されています。

 

しかし、今は共働き夫婦世帯が増加してきており、報告書のモデル世帯より年金受給が多いですし、老後の蓄えも多いと考えられます。

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男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 | 内閣府男女共同参画局

 

あとで詳しく書きますが年金だけでは老後生活はお金が足りなくなるでしょう。

 

しかし、「老後2000万円不足」だけが一人歩きして、ただただ国民の不安を煽っただけの形になっています。

 

しかも、「管轄外の金融庁が年金について言及するとは何ぞや」、「担当大臣が報告書受け取り拒否」、「自民党が報告書撤回要求」などで、今後の議論展開が頓挫…

 

今の状況では本当にただただ国民の不安感情を煽っただけになっています。

 

年金制度破綻は非現実的

年金制度が破綻するということはほぼ非現実的であります。
年金制度の財源は、①保険料   ②国庫負担   ③積立金  の3つが主です。

 

①保険料は、
自営業者などの国民年金の第1号被保険者による国民年金保険料とサラリーマンなどの国民年金の第2号被保険者と労使折半による厚生年金保険料などからなります。

 

②国庫負担は、
消費税などの税金が形を変えて年金に充てられています。
平成16年の年金制度改正で基礎年金国庫負担は2分の1に引き上げられました。

 

③積立金は、
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金積立金の運用で得られた収益です。平成29年度の運用実績は、収益額約10兆円(運用資産額約156兆円の+6.9%)となっています。

 

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年金積立金管理運用独立行政法人

 

年金制度が破綻するということは、保険料を誰も納めなく、そして税金を誰も納めなく、積立金156兆円の取り崩しで底が尽きた場合です。

 

非現実的ですね笑

 

所得代替率が下がるのは既定路線

所得代替率とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役時代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すものです。 

 

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所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

 

このような図を見ると分かりやすいですね。
将来的にこの所得代替率は低下していく見通しです。

 

平成26年財政検証での所得代替率の将来見通しを見てみましょう。

 

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所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

 

所得代替率の将来見通しは、経済高成長ケースで50〜51%です。
一方、経済低成長ケースでは調整を続けなければ、35〜45.7%となります。
現在(平成26年)の所得代替率は62.7%となっています。

 

ちなみに2018年度の日本の実質経済成長率は0.8%なので、ケースCあたりに該当すると思われます。

 

もちろんですが、所得代替率も所得税などのように所得に応じて、パーセンテージが変わってきます。

 

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所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

 

現役時代の所得が高いほど所得代替率は低くなり、所得が低いほど所得代替率は高くなります。
所得を再分配しているイメージですね。

 

とにかく、公的年金給付のものさしである「所得代替率」は現在の62.7%から経済高成長ケースでも約50%、経済低成長ケースでは50%を下回る可能性があるということです。

 

本当の目的は「国民の投資意識改革」

恐らくですが、金融庁の本当の目的は「国民の投資に対する意識改革」だったのではないでしょうか?

 

日本人の投資意識

日本、米国、英国の個人金融資産の構成比を見てみましょう。

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家計金融資産の現状分析 − 金融庁

 

見ての通り、日本は他国と比較して、個人金融資産の半分以上が預貯金で、株式・投信等の比率は2割以下と低い水準です。
もちろんですが、金融資産の推移も他国と比較して横ばいとなります。

 

金融庁が色んな策を講じた結果、NISA口座は現在約1300万口座、iDeCo(個人型確定拠出年金)の口座数は100万口座を突破しています。
国民の資産形成に対する意識の高まりが見られます。

 

しかし、NISAもiDeCo、企業型DCもまだまだ国民の一部しか活用していない状況です。
金融庁は、NISAやiDeCoなどの普及率をもっと伸ばしたいのでしょう。

 

もっと国民に資産運用を体験してもらって、その上で金融リテラシーを養っていくことが理想です。

 

そこで、今回のような報告書を公表して老後資産の不安を煽ったのです。
「老後2000万円不足」という具体的な数字かつ注目されやすいワードを使って。

 

そして、
「国民の投資に対する意識改革を図り、NISAや確定拠出年金の普及拡大につなげる!」という算段だったのでしょう。

 

しかし、まさかの展開でこの計画は頓挫となったわけですよ…

 

 

 予想される今後の展開

「老後2000万不足」を利用した詐欺

今後「老後2000万円不足」を利用して、詐欺まがいの保険・投信・金融サービス等

が増加するでしょう。

 

「国が老後2000万円不足するって言っています。老後資産を守るために今から対策しておきませんか?」
と言って、ぼったくり保険や投信などを売りつける。

 

確実にこのような詐欺は多くなりますし、確実に騙される人が出てくると思います。
皆さんも気をつけてください。

 

 

より貯蓄志向へ

 「老後の資産が足りなくなるのなら、今から貯蓄しておかないと」とより貯蓄志向が強くなっていくでしょう。

 

そして1銭も無駄にできないから、リスクのある投資なんてできませんってなっていくことが考えられます。

 

しかし、それではいつまで経っても金融リテラシーは身につきません。それどころか、今回のような格好のネタを利用した詐欺に騙されるのがオチです。

 

 投資・資産運用を体験してみて、分からないことを勉強して、知識を身に付ける。
やはり、経験から得られる知識は計り知れないですよ。

 

 

おわり

今回の報告書による「老後2000万円不足」は国民の不安感情を煽っただけになりました。
それが国民の老後の資産形成をする自助努力に繋がればいいのですが…

 

ここまで見ていただきありがとうございました。
投資はあくまで自己責任で。